
いくつになってもクールな岩城滉一さん、本当に憧れますよね。70歳を過ぎてもなお、あの美しいカワサキのZに乗り続ける姿は、私たちバイク乗りに「理想の歳の重ね方」を見せてくれている気がします。
さて、その「岩城滉一さんのZ」について調べ始めると、ちょっとした混乱に直面しませんでしたか?「岩城滉一 Z1」と検索しているのに、必ずと言っていいほど映画『爆発!暴S族』時代の「Z2」の話が出てくる。当時のカスタム、いわゆる「爆発仕様」や、伝説のバイクチーム「クールス」との関係も非常に気になります。
その一方で、現在の愛車は「PAMS(パムス)」という専門ショップが手掛けた、とんでもなくキレイな「Z1」だという情報に行き着きます。関連して「黒豆」なんていう謎のキーワードも出てきたり…。そして何より、誰もが知りたいのは「あの完璧なPAMS仕様のZ1は、一体いくら出せば手に入るのか?」という、その価格ですよね。
私自身、長年自動車業界にいた経験から、古いクルマやバイクのメカニズムや、その価値がどうやって決まるのかには非常に興味があります。岩城さんのZについても、一人のバイク好きとして、そして元業界人として(笑)、かなり深く調べてみました。
この記事では、そうした岩城さんとZにまつわる様々な疑問や時間軸の混乱を、一つひとつ丁寧に解きほぐし、分かりやすく整理してお届けしますね。
記事のポイント
岩城滉一のZ1を検索したときの混乱:Z2との違い

「岩城滉一=Z」というイメージは、もはや日本のバイクカルチャーの一部と言っても過言ではありません。ですが、「岩城滉一 Z1」と検索したはずなのに、映画『爆発!暴S族』の話題、つまり「Z2」の情報ばかりが出てきて戸惑った方も多いと思います。
実はこれこそが、岩城さんとZを語る上で最も重要なポイントなんです。そこには、映画デビュー当時の「Z2」と、現在の愛車である「Z1」という、2つの異なる時間軸が存在します。

このセクションでは、なぜこのような混乱が生まれるのか、その歴史的背景と、伝説の始まりとなったZ2について詳しく掘り下げてみましょう。
映画『爆発!暴S族』のZ2

岩城さんの「バイク乗り」としてのパブリックイメージを決定づけたのは、1975年(昭和50年)に公開された東映の映画『爆発!暴S族』です。これは岩城さんのデビュー作であると同時に、当時の若者文化に強烈なインパクトを与えました。
劇中で岩城さんがリーダーとして駆っていたバイク、それこそがカワサキ「Z2(ゼッツー)」(国内モデル名:750RS)なんです。

「あれ? Z1じゃないの?」と思いますよね。当時、世界を驚かせたZ1(903cc)は輸出専用モデルでした。日本国内では750ccを超える排気量のバイクには自主規制があり、正規販売ができなかったんです。
そのため、国内向けにはZ1のエンジン排気量を746ccに縮小した「Z2 (750RS)」が投入されました。当時の日本の若者にとって、ZといえばこのZ2こそが、国内で乗れる最速・最強の「Z」だったわけです。
当時の「爆発仕様」とは

映画で登場したZ2は、ただのノーマル車両ではありませんでした。当時のストリートカルチャーを色濃く反映したカスタム、通称「爆発仕様」と呼ばれるスタイルだったのです。
具体的には、以下のようなカスタムが特徴でした。
- YBハンドル: 後述しますが、独特の絞り角を持つハンドルバー。
- 集合マフラー(集合管): 4本出しのノーマルマフラーを、1本にまとめたマフラー。軽量化と独特のサウンドを生み出しました。
- シート加工: いわゆる「アンコ抜き」や、シート後方を反り上げる加工。
これらは単なる改造ではなく、当時の若者たちにとっての「自己表現」であり、仲間意識の象徴でもありました。この映画のスタイルが、その後のカスタムシーンにどれほど大きな影響を与えたか、計り知れません。
Z1とZ2の決定的な差異

では、混乱の元であるZ1とZ2は、具体的に何が違うのでしょうか。
この2台は、外観のほとんどを共有する兄弟車です。タンクやサイドカバーなどの外装パーツはほぼ同じで、エンブレムを見なければ(あるいは交換されていれば)見分けるのは非常に困難です。だからこそ、一般の私たちには混同されやすいんですよね。
両者を分ける最大の、そして決定的な違いは、やはりエンジン排気量です。
Z1とZ2の主な違い
| 項目 | Z1 (900 SUPER4) | Z2 (750RS) |
|---|---|---|
| モデル名 | 900 SUPER4 | 750RS (Road Star) |
| 販売市場 | 輸出専用(主に北米・欧州) | 日本国内専用 |
| エンジン排気量 | 903cc | 746cc |
| 最高出力 | 82ps / 8,500rpm | 69ps / 9,000rpm |
| 最大トルク | 7.5kg-m / 7,000rpm | 5.9kg-m / 7,500rpm |
※スペックは年式や仕向け地により異なる場合があります。
排気量が違えば、当然ながらキャブレターの口径や内部のセッティングも異なります。Z1が持つ903ccの余裕あるトルク感に対し、Z2は746ccながら高回転までシャープに回るエンジンだったと言われています。

ちなみに、このZ1/Z2の伝説的なスタイルとDNAを受け継いで現代に蘇ったのが、大人気のネオクラシックモデル「Z900RS」です。私も試乗したことがありますが、あのDOHC4気筒のスムーズさと、Zらしいマフラーサウンドの演出は、まさにZ1/Z2への深いリスペクトを感じさせますよね。
伝説のバイクチーム「クールス」

岩城さんの「本物感」を語る上で欠かせないのが、伝説的なバイクチームであり、後に矢沢永吉さんが率いたキャロルの親衛隊からロックバンドとしてもデビューした「クールス(COOLS)」の存在です。
岩城さんは、そのキャリアのごく初期において、このクールスに在籍していました。これは映画の中の役柄ではなく、現実の話です。
この事実が、映画『爆発!暴S族』のカリスマリーダーという役柄に、圧倒的な説得力と「本物」のオーラを与えました。当時の若者たちが熱狂したのは、スクリーンの中の岩城さんと、現実のクールスというカルチャーが地続きになっていたからに他なりません。
時代をつなぐYBハンドル

ここで、非常に興味深く、そして象徴的なキーパーツの話をさせてください。それが「YBハンドル」です。
1975年の『爆発仕様』で、Z2のカスタムパーツとして定番だったのが、この「YBハンドル」でした。これはカワサキZの純正パーツではなく、驚くことにヤマハのビジネスバイク「YB50」などに使われていたハンドルバーを流用したものなんです。
当時の若者たちは、このYBハンドルの絶妙な絞り角と高さが、Zの車体に最もクールなライディングフォームをもたらすことを発見しました。今や文化的価値さえ帯び、当時の本物はオークション市場でとんでもない高値で取引されているほどです。
40年以上の時を超えた「こだわり」

そして、ここからが本当にクールな話です。
なんと、40年以上の時を経て、岩城さんの現在の愛車であるZ1(PAMS仕様)にも、この「YBハンドル」が採用されているんです。
最新の技術でフルカスタムされたスーパーマシンに、あえて自身の原点である『爆発!暴S族』時代のスタイル(YBハンドル)を取り入れる…。これは単なるノスタルジーではありません。自身のルーツとスタイルへの敬意であり、「岩城滉一」というアイデンティティを貫く「セルフオマージュ」に他ならないと私は思います。最高にシビれますよね。
岩城滉一とZ1の現在:PAMSの技術

映画でZ2を駆った若き日の岩城さんも強烈なインパクトでしたが、70歳を超えてもなお、美しいZ1を自在に乗りこなす現在の岩城さんの姿は、また違った凄みと憧れを感じさせます。

ただ、私のように旧車に興味がある方ならピンとくるはずですが、50年も前の空冷バイクを「一番楽しい」と言い切って日常的に乗ることは、並大抵のことではありません。

始動性の悪さ、電装系のトラブル、現代の交通事情では心許ないブレーキ、オイル漏れ…。旧車にはそうした不安が常につきまといます。
その全ての不安を解消し、岩城さんに「一番楽しい」と言わしめている秘密こそが、現在の愛車Z1を手掛けているカスタムショップ「PAMS(パムス)」の存在です。このセクションでは、現代の匠の技術で蘇った「岩城仕様Z1」の秘密に迫ります。
空冷Zの巨匠「PAMS(パムス)」とは

「PAMS(パムス)」は、神奈川県にあるカワサキの空冷Z(Z1, Z2, KZ系など)を専門に扱う、日本国内で最高峰の技術と名声を持つカスタムショップであり、パーツメーカーでもあります。
PAMSの真骨頂は、単なる「レストア(Restoration=復元)」ではなく、「レストモッド(Restomod)」という哲学を徹底している点です。
「レストア」と「レストモッド」の違いとは?

この2つは、似ているようで全く異なる概念です。
- レストア (Restoration)
「復元」を意味します。バイクを製造当時の新車状態に戻すことを目的とします。可能な限り当時の純正パーツを使い、オリジナルを尊重する手法です。 - レストモッド (Restomod)
「Restoration(復元)」と「Modification(改造)」を組み合わせた造語です。ヴィンテージな外観や雰囲気は最大限尊重しつつ、エンジン内部、電装系、足回り(ブレーキ、サスペンション)といった中身を現代の技術や高性能パーツで根本から作り直す手法です。
PAMSがやっているのは後者です。見た目は紛れもないZ1でありながら、中身は現代のスーパーバイクに匹敵する走行性能と、圧倒的な信頼性を与える。だからこそ、旧車特有の不安を感じることなく、心からライディングを楽しめるわけですね。

PAMSが手掛けているのは、その遥か先を行く「究極のカスタム」と言えるでしょう。
PAMSが手掛ける詳細スペック

では、現在の「岩城仕様=PAMS仕様」のZ1は、どのような中身になっているのでしょうか。公開されている情報やPAMSのデモ車などから、その驚くべきスペックの一部を見てみましょう。
「70年代の雰囲気を重視しつつ、現代の道をしっかりと走れる」というコンセプトが、パーツの隅々にまで表れています。
岩城仕様のZ1スペック(推定)
| パーツ | スペック | 解説 |
|---|---|---|
| エンジン | 総排気量916at | Z1ノーマルの903ccから、PAMSによるボアアップ(排気量拡大)が施されています。耐久性を維持しつつ、トルクとパワーを上乗せしていると推測されます。 |
| Rショック | MRS | MRS(エムアールエス)製の高性能リヤサスペンション。ヴィンテージなルックを保ちつつ、現代のタイヤでもしっかりと路面を掴む性能を確保しています。 |
| ハンドルバー | YBハンドル | 前述の通り、岩城仕様を象徴するキーパーツ。性能だけでなく「スタイル」への徹底したこだわりが伺えます。 |
| ステップ | PAMS | PAMS(パムス)製のライディングステップ。ノーマルよりも確実な操作性と、最適なライディングポジションを実現します。 |
| シート | PAMS 鞍シート | PAMSを代表する大人気パーツの一つ。当時の「鞍シート」の雰囲気を再現しつつ、現代のウレタン素材などで長距離でも疲れにくい快適性を両立させています。 |
| 電装系 | MOSFET型レギュレーター | 旧車の最大の弱点である電装系(充電・点火)を、現代の技術で根本から安定化させる定番パーツ。これが無いと安心して乗れない、と言っても過言ではありません。 |

もちろん、これらは氷山の一角です。スペック表には現れない部分、例えばエンジン内部の精密な組み付けやフリクション低減加工、フレームの測定と補強など、PAMSが長年培ってきたノウハウこそが、このマシンの核心なんだと思います。
PAMSと「黒豆」の関係

「岩城滉一 Z1」と検索していると、時折「黒豆」というキーワードに出くわすことがあります。これは一体何でしょうか?
私も気になって調べたところ、これはPAMSに関連するワードのようです。PAMSが販売するキーホルダーやステッカーといったオリジナルグッズに「黒豆」という名称やロゴが使われていることが確認できました。
おそらくPAMSのオリジナルブランド名や、製品ラインの愛称、あるいはショップのマスコット的なものだと推測できます。単なる整備工場ではなく、一つのカルチャーやブランドとしてファンに愛され、認知されている証拠ですね。こうした遊び心も、PAMSの魅力の一つなのかもしれません。
コンプリート車両の価格はいくら?

さて、いよいよ皆さんが一番気になっているであろう「価格」の話です。
岩城さんが乗っているような、PAMSでフルカスタムされたZ1(コンプリートカー)は、一体いくらで手に入るのでしょうか? 考えるだけでワクワクしますが、同時にちょっと怖くもありますね(笑)。
PAMSコンプリートの「推定」価格

まず大前提として、PAMSが製作するコンプリート車両は、一台一台オーナーの要望に合わせて作るワンオフ製作が基本となるため、「定価」というものは存在しません。
しかし、その費用感を「推定」することは可能です。費用は大きく分けて、以下の3つの要素で構成されます。
- ベース車両費
まず、元となるZ1の車両本体が必要です。ご存知の通り、Z1の価格は近年すさまじく高騰しています。状態が悪くても100万円単位、レストアベースで200万~300万円、状態の良いものなら500万円を超えるプライスが付くことも珍しくありません。 - パーツ費用
次にカスタムパーツ代です。PAMS製の鞍シート(中古市場で約8万~12万円)、マフラー(同13万~15万円)、エンジン性能を左右するピストンキット(約11万円~)、電装系を一新するMOSFET型レギュレーター(約2.2万円)など…。これらはほんの一部で、足回りやブレーキなども含めれば、パーツ代だけで軽く100万円~200万円以上はかかるでしょう。 - 技術料(工賃)
A_50_PAMS仕様の「価値」の核心であり、最もコストがかかる部分です。エンジンを一度すべて分解し、洗浄、測定、必要な加工(ボアアップなど)を施し、精密に組み上げるフルオーバーホール。フレームが歪んでいないか測定し、必要なら補強。古い電装系をすべて撤去し、現代のハーネスを引き直す作業…。これら目に見えない部分の専門技術料(工賃)は、パーツ代を上回ることも一般的です。
これらを総合すると、PAMSによるフルコンプリート車両の製作費用は、ベース車両代を別にしても数百万円、総額では安く見積もっても500万円、仕様によっては800万円、1,000万円、あるいはそれ以上に達すると推定するのが、最も現実的なラインでしょう。

岩城さんが「一番楽しい」と語るバイクは、一般的な中古旧車ではなく、現代の最新スーパーバイク新車価格に匹敵する、あるいはそれ以上の価値を持つ「PAMS製ハイエンド・レストモッド」なんですね。
価格に関する重要なご注意
重ねて申し上げますが、ここで提示した金額は、あくまで公開されているパーツ価格や一般的な工賃から算出した「推定」です。実際の価格は、ベース車両の状態、カスタムの仕様、為替レート、そして何より依頼する時期によって大きく変動します。
これは私の自動車保険業界での経験からも言えることですが、これほどの高額車両となると、その価値やリスクも特殊です。正確な費用や見積もりについては、PAMSのような専門ショップに直接お問い合わせいただき、専門家と綿密にご相談ください。
まとめ:岩城滉一 Z1が持つ魅力
ここまで、岩城滉一さんとZ1、そしてZ2にまつわる歴史と現代の技術について掘り下げてきました。
「岩城滉一 Z1」というキーワードで検索する私たちが本当に知りたかったのは、単なるバイクのスペックや価格情報だけではなかったように思います。
それは、1975年の『爆発!暴S族』でZ2を駆った若き日のカリスマの姿と、70歳を超えてもなお、PAMSによって完璧に仕上げられた最高級のZ1を「一番楽しい」と乗りこなす現在のカリスマの姿…。
その両方のイメージが融合した、「岩城滉一という生き方(スタイル)」そのものを象徴する文化的なアイコンなのではないでしょうか。
過去のスタイル(YBハンドル)へのリスペクトを忘れず、現代の技術(PAMS)でマシンを進化させ、人生を謳歌し続ける。その姿は、日本のバイクカルチャーにおける半世紀にわたる「継続」と「進化」の物語そのものです。
だからこそ、岩城さんと彼が乗るZは、世代を超えて私たちバイク好きの心を掴み、惹きつけてやまないのでしょうね。いやはや、本当にクールな大人の男の、究極の趣味の姿だと思います。私も、いつかはあんな風にカッコよく旧車を乗りこなしてみたいものです。





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